選んだコースは「哲学の道」。
京都市街地のやや北東部(洛東)にあるこの名所は、南禅寺から銀閣寺までの約2キロにわたる疏水べりの散歩道のことを差して呼んでいます。「哲学の道」の由来は、近くにある京都大学で学問を極めた世界的哲学者の西田幾太郎氏や田辺元氏が思想に耽りながら散歩をしていたということからで、以前は「思想の小径」と呼ばれていたとか。
なるほど、琵琶湖へと流れ込む疏水に沿って敷かれた石畳は、深い想いを胸に一歩一歩踏みしめるのに相応しい風情。この沿道を飾るのが有名な桜並木で、一斉に開花すればそれはまるで桜のアーケード、鮮やかな美しさは感動ものです。
疏水に垂れる桜の枝は、清らかな水面と相まって幻想的な怪しささえ漂わせて、思えばそれはまるできものの絵柄のよう、多くの染色作家が桜のある風景をモチーフにした作品を描きたくなる気持ちがわかります。
桜の種類はほとんどがソメイヨシノ、手を伸ばせばそのふんわり薄ピンク色の花びらに触れることすらできそうです。
でもそんなことをする人はおりません。まるで大切な宝物を愛でるかのごとく、カメラのレンズを近づけて接写を試みたり、そっと香りを嗅いでみたり。そしてもちろん、きもの姿の女性もチラホラと見かけました!!「哲学の道」に似合うのはやっぱりきものだという認識のもと、それぞれ、花に負けないほどのあでやかさを醸し出していらっしゃいます。
「(きものを)レンタルで借りちゃいました」と、うれしそうに語る女性同士の観光客、彼氏のエスコートにちょっとはにかむ色白美人、ご主人のカメラの被写体になっている中年のご婦人、いずれの方々もこのロケーションを心から楽しんでいるようでした。
銀閣寺はもちろん熊野若王子神社、紅葉で有名な永観堂や南禅寺、見どころたっぷりのこの周辺散策は、きもの姿ならきっと味わい深い思い出が残すことができるでしょう。
沿道に並ぶのは美観に溶け込む造りの和風アート系の小物屋やポップな喫茶店、甘味屋、有名なあぶら取り紙のお店も瀟洒な庭園をしつらえ多くのお客さんを集めています。観光地にありがちな俗っぽさはあまりなく、ここが「哲学の道」所以の趣なのかもしれません。ゆっくり散歩をさせてもらっている犬、日向ぼっこをする猫、民家も建ち並び静かで穏やかな住宅地の横顔をも見せてくれる中、日々のなにげない暮らしに、人はその人なりの哲学を感じて生きているのだと思いました。
どこからともなく聞こえる「ゴーン」というお寺の鐘の音、ふと目を閉じるとかすかに聞こえる鳥のさえずり、前を歩くきものの女性の肩にはらりと落ちた桜の花びら‥。
桜の下にいる幸せ、きれいなものをきれいだと思える幸せ、日本人であることの喜びを感じずにはいられませんでした。
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