はじめて桐の花を見たのは京都でした。4年前に住んでいたマンションの近くに、相国寺の塔頭があります。その入り口に大木が1本あって、はじめは何の木かまったく気づかなかったのですが、初夏のころ突然、薄い藤色の花のたくさん咲いているのが目に飛び込んできたのです。気になる花が咲いていたらいつも図鑑を繰ってその名を調べますが、その必要もなく直感的に、桐だ!とわかりました。まさしく家紋やきものの文様になっているデザインそのものだったからです。それからは毎年、初夏になると花が楽しみで、引越してからもわざわざ見に行くほどでした。
ところが、今年行ってみるとその木がまるまる無くなっていたのです。拍子抜けしました。処分してしまったのは、引っ越す前の夏に台風で大きな枝が折れてしまったことがあったからかもしれません。どんな理由があったにせよ、残念でなりません。
そんなわけで、今年は桐の花を見逃してしまったとがっかりしていた次の日、なにげなく乗っていた通勤バスの車窓から、もっと大きな桐の木が見えたのです。コインパーキングの横の空き家らしき民家の庭から、空に向かって広々と枝を伸ばし、たくさんの花を咲かせています。ゴールデンウィークにもかかわらず出勤して働く自分へのごほうびをもらったみたいで、うれしい発見です。それからは毎日バスに乗るのが楽しみで、花が朽ちていくまでじっくり堪能できました。
百合の花というと洋花のイメージがありますが、襲の色目にも百合(表:赤、裏:朽葉色)があり、古くから愛されていた花です。夏の花ですから、袷の百合の帯は5月のうちに締めなくちゃと、いつもタンスのなかから引っ張り出します。「鬼もあり姫もありけり百合の花」懐の深い花ですね。
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写真を撮ったのは花の盛りをだいぶ過ぎた5月12日。満開のときは本当に爽やかな美しさでした。
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| まさに“家紋のなる木”。このあと葉はもっと大きくなり、神楽鈴のような実がつきます。 |
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