|
祇園祭の菊水鉾では、町会所で7月13日から16日までお茶席を開いています。茶席といっても、接待する側も浴衣姿の気軽な席で、当日券(2000円)もあり、通りすがりに立ち寄ることもできます。菊水鉾のためのお菓子、亀廣永の「したたり」が美味で、黒砂糖の甘さと見た目の涼しさ、口に入れてホロリと崩れる食感もよく、さらに、お土産に菊の模様の入った菓子皿までいただけます。
お茶券をいただいたので、仕事帰りに菊水鉾へうかがいました。
実は何年か前に一度だけ、このお茶席のお手伝いをさせていただいたことがあります。そのころはまだ金剛能楽堂が四条室町にあって、菊水鉾の町会所として利用されていたため、お茶席も能楽堂で開かれていました。明治初年に建てられた木造の能楽堂は、床板から壁、柱まで時代を経て黒く沈み、全体に薄暗くもシンとした空気があって、厳かな空間でした。菊水鉾のご神体の「菊慈童(枕慈童)」は謡曲に想を得ていますし、実際に名水と言われた「菊水の井戸」もあって、能楽堂と鉾町との縁が深いのもわかります。京都の中心部四条のビルが林立する谷間に、こんな空間が潜んでいたとは全く知らず、驚きとともに、いかにも京都らしいと感じました。
まだお茶のお稽古を始めたばかりのころで、右も左もわからぬままお運びをさせていただいたのですが、舞台上に飾られた鉾のご神体の飾りや点前の道具の夏らしい取り合わせ、なにもかもが目新しく、祭の荘重さともてなしの心がありました。そしてお稚児さんたちの来訪まであって、(京都に住んでまもない私は稚児の存在もよく知らず、初めて間近で拝見しました。)本当に得がたい体験でした。
その後、築130年も経った能楽堂は老朽化のため2000年末に閉じられ、2003年に烏丸一条に新築(舞台は移築)されました。跡地にはマンションが建ち、その2階が新しい町会所となりました。
新しい町会所でのお茶席は、雰囲気こそ様変わりしましたが、「したたり」の美味しさも菊のお皿も変わらずでした。コンチキチンの音を聞きながらお茶の接待を受けられるのは、菊水鉾ならではのこと。環境が変わってもお茶席がなくならずにあることは有難いことだと実感しました。
|