新緑のころ、丘陵と相模湾に囲まれた湘南の地、鎌倉へ初めて訪れました。行きたい場所はたくさんありますが、日帰りなので鎌倉駅周辺にしぼって散策します。
まずは鎌倉雪ノ下にある鏑木清方の旧居に建てられた美術館、鎌倉市鏑木清方記念美術館に向かいます。観光客であふれる小町通りからほんの少し脇に入るとあたりは閑静な住宅街で、こんなところに住んでみたいと思わせるような町の一角、和風の路地の奥に小さな美術館はありました。展示フロアは広くはありませんが、大作からスケッチ、雑誌の挿絵などの小品まで、テーマに沿った作品が展示されています。清方の描く女性はみな佇まいが違います。京都の閨秀画家上村松園の描く女性とはまた違った風情で、『朝涼』『築地明石町』など、きものが好きな方にはぜひ見て欲しいと思う絵がたくさんあります。館内の一室には画室が再現され、中庭にはさまざまな木々が植えられていました。ちょうどツツジが咲いていて、清方が好きだったという紫陽花は新芽が芽吹いていました。
続いて鶴岡八幡宮へ。歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』の大序や『暫』の舞台であり、史実をひもとけば鎌倉三代将軍実朝が暗殺された場所、一度訪れたかった神社です。ちょうど5月5日は「菖蒲祭」の神事の日で、舞殿では舞楽が奉納されていました。舞殿に上がる回廊の左右には薬玉が下げられていて、色とりどりの花で形作られた薬玉の垂れ下がった五色の糸には菖蒲の葉がくくられていました。端午の節句らしい飾り物です。居並ぶ楽人の衣裳は長く裾が下がって鮮やかで、舞人の衣裳よりも目を奪われました。本宮に上がる大石段が舞殿の正面にあたるため、さながら見物客の座席のようになっていて、観客と有名な大銀杏とを脇目に見ながら大石段を上がりました。石段の上の本宮からは鎌倉の街が一望でき、壮観です。新緑の色と五月の風が爽やかに吹き抜けました。
続いて、若宮大路の段葛でお買い物。何軒もある鎌倉彫の店などぶらぶらと覘いてみます。わたしは静岡出身ですが、祖母が趣味で鎌倉彫を彫っていたので馴染みがあります。家にあるタンスや小物入れと似たようなものを探してみると想像を超えたいいお値段でびっくり。もっと大事に扱わなければと痛感しました。手の届く範囲の小さな小物を探し、きもの仲間へのおみやげに小鳥とコスモスのブローチを購入しました。
買い物にはもう一つ目当てがありました。鳩サブレで有名な豊島屋の本店でしか買えない鳩グッズです。10種ほどあってどれも心ひかれますが、「鳩だより」というレターセットと鳩サブレーそっくりの根付「鳩三郎」を買いました。鳩三郎なんてだじゃれみたいですが、鳩サブレーが生まれた明治のころ、鶴岡八幡宮の額の八の字が鳩であることや八幡太郎義家、源九郎義経などからの連想で創業者がひらめき、鳩三郎から鳩サブレーとなったのだそうです。
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