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きものあそび

牧野茜のきものコーディネート
切らないで作った作り帯 2008.03

立春の日に祖母が亡くなりました。花を愛した人は春が来た日に旅立つのでしょうか。庭のあちこちにこれから咲くはずの花々があって「東風吹かばにほひをこせよ梅花 主なしとて春を忘るな」と思わずつぶやいてしまいました。わたしがきものを着るようになったことを一番に喜んでくれた人でしたから、溢れる感情は尽きません。
数年前、帯を締めるのを大層に感じていた祖母は、やり方を教えてもらって名古屋帯を全て作り帯にしました。切らずに作れるというのが気に入ったのか、普段は針仕事などしないのに、ほとんど全ての手持ちの帯を縫い止めて自分サイズの作り帯に仕立てました。喪服を出すのにタンスを開けると、作り帯が次から次へと出てきます。帯が見つからないと必死に探していたら、なんと喪服の帯まで作り帯にしていたのでした。

切らずに作った作り帯。構造は改良枕でふくら雀を作るときとほぼ同じです。折りたたんでお太鼓の形に縫い止め、胴回りとお太鼓の裏に前かんの金具をつけてあります。わたしの身体に合う好みの大きさは、このお太鼓の5cm増しくらい。

いつ締めるつもりだったのでしょう。結局、縫ったものの締めなかった帯も多いのだろうなと思うにつけ、それでもこれだけ縫ったのは、長生きしてもっともっときものを着るつもりだったのだろうと思われ、なんだか切なくなりました。
形見分けではないですが、締めたいなと思う作り帯を2本持って帰ることにしました。朝が弱くて寝坊もしょっちゅうのわたしには、作り帯が一つでもあると便利かもしれないと思ったのです。早速試してみると意外に苦戦します。帯を巻くことに慣れている身には、巻かない作り帯ではしっくりこないのです。いくら調整してみても身に添わない感じが離れません。そのうえ、お太鼓大きめが好みのわたしにはシルエットが小さい上に、すぐにたれがめくれ上がってしまい、始末に悪いのでした。
最近帯を巻く楽しさがわかってきたところなので、帯を締める快適さや着心地のよさが望めない以上、作り帯はわたしには必要のないものだとわかりました。結局、作り帯を自分サイズに作りなおすことはせずに、1本はほどいて元通りにしました。もう1本は小さいお太鼓が好みのスタッフに使ってもらうことにしました。祖母から受け継いだたくさんのきものや帯を、一日でも多く着ることが供養になるのだなあと改めて思う毎日です。


枯茶を大きな市松にぼかした小紋は、唐草の地紋が美しくちょっとよそいきに着ています。

祖母が作り帯にしていた名古屋帯を、崩して元に戻しました。帯を身体に添うように巻きつけてお太鼓結びにするという一連の動作が心地よいので、長い帯を結ぶほうが好ましいのです。切らないでいてくれて本当によかった。
     

おびあげは辛子色のちりめん、ベージュと臙脂二色のおびじめは細身のくけ。

柿色の地色にお太鼓部分だけふくれ織のように不思議な模様が織られています。
     
 
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